松本裕司は自分のボスが全身を強張らせ、まるで痴漢に戯れられた後に拒みながらも期待している少女のように、顔を赤らめて期待に満ちた様子を見て、言葉にできない気持ちになった。
見ているうちに、松本裕司は黙って顔を拭い、頭を背けた。もう見ていられなかった。
奥様は変わってしまった。以前は兄の女だったのに、今では女の兄になってしまった。ああ。
九条結衣は藤堂澄人が無言で自分を見つめているのを見て、さらに催促した。「当ててみて?」
藤堂澄人の瞳は徐々に深みを増し、掌で九条結衣の指をより強く握りしめた。
しかし彼は何も言わなかった。ただ一つ確信していたのは、この女が以前、自分と結婚させることに成功し、しかも全財産を惜しみなく彼女の名義に移すことを快く承諾させたのは、きっと小悪魔で、その術もかなりのものだったということだ。