たとえ彼は今、この子供は自分の子供だと心の中で何度も言い聞かせ、愛さなければならない、愛するべきだと思っても、それは無駄だった。
しばらくして、彼は九条結衣の腹部から視線を外すと、先ほどの残虐な殺意も消え去った。
藤堂澄人は眉をひそめた。この感覚は異常すぎて、説明のしようがなかった。
記憶は失っていても、頭が働かないわけではなく、基本的な判断力まで失ってはいなかった。
静かに眠る九条結衣の寝顔に目を向けると、それまで冷たかった視線が、急に柔らかくなった。
彼女の傍らで少し付き添った後、彼は立ち上がって部屋を出た。
Z国行きの飛行機まであと十数時間、藤堂澄人が主寝室から出てきた時、松本裕司はまだリビングにいて、彼が出てくるのを見ると、また恭しく挨拶をした。「社長」
「ああ」