藤堂澄人が山田花江に会った後、小林晋が死んでしまい、彼女と同じ車に乗っていた時にこんな大きな事故が起き、藤堂グループの社長失踪のメールも彼女の病院から送られてきた。
九条結衣は考えれば考えるほど、山田花江が怪しく思えてきた。
そう考えながら、彼女は病院の休憩室に長居せず、外に出た。
「奥様」
松本裕司は藤堂澄人の部屋の外で見張り続けていた。社長は彼のことを覚えていなくても、彼は社長に忠実であり続けなければならなかった。
「私と一緒に戻りましょう。話があります」
松本裕司は一瞬驚き、九条結衣の表情がこれほど深刻なのを見て、心が引き締まった。藤堂澄人の病室のドアを一瞥してから、頷いた。「はい、奥様」
病院を出てから、九条結衣は前方を見つめたまま、半歩離れて歩く松本裕司に言った。「この数年間の山田花江のアメリカでの状況を調べてもらえますか。できるだけ詳しく」
その言葉を聞いて、松本裕司の顔には隠しきれない驚きが浮かんだ。
「奥様は山田さんを疑っているのですか?」
彼は博士課程を修了してから、ずっと社長の側で仕事をしてきた。
24歳で博士号を取得し、同年代の多くの人々より優秀だと自負していたが、社長の特別補佐官になった時、社長はすでに23歳だった。
しかし、それ以前から彼は社長のことをよく知っていた。19歳で藤堂グループを引き継いだことも知っており、その時初めて、自分より優れた人物がいることを知った。
彼は社長が藤堂グループを安定させ、一歩一歩頂点へと導いていく様子を見てきた。
彼は社長より一歳年上だったが、若くして冷徹な手腕を見せる若者に心から敬服していた。
そのため、藤堂グループに入社して社長の私設秘書になった時から、社長が彼を追い出さない限り、一心不乱に社長の私設秘書を務めようと決心していた。
だからこそ、山田さんのことは決して見知らぬ存在ではなかった。
ほぼ半年に一度、社長はアメリカに山田さんを訪ねていき、社長の心の中では、本当に山田さんを実の母親のように扱っていた。
今、突然奥様から山田花江を調査するように言われ、松本裕司の心は意外さと衝撃で一杯だった。
九条結衣は松本裕司が何に驚いているのかわかっていたが、彼に説明する余分な時間はなかった。ただこう言った。