924.記憶を失うだけでなく、知能も失わせる

藤堂澄人の身体の各指標は順調に回復しており、実際、前の一ヶ月の間に、ほぼ治療は完了していた。

そのため、今日目覚めた後は、記憶に問題があること以外には大きな問題はなかった。

彼はベッドに座り、意外なことに自分の頭の中が九条結衣のことでいっぱいだということに気づいた。

昏睡中は頭の中が木村靖子という名前でいっぱいだったのに、目覚めた後は、木村靖子という人物に対して、あの曖昧な記憶の中で彼女がどんな役割を果たしていたのかという好奇心以外には、まったく興味が湧かなかった。

むしろ、あの九条結衣のことを考えていた。彼に対してあんなにひどいことをしたのに、それでも彼は彼女に会いたいと思っていた。

彼女が自分に対して険しい顔をしているのを見ると、落ち着かない気持ちになり、うっかり何か言い間違えて彼女を怒らせてしまうのではないかという直感さえあった。