九条結衣が入ってきた時、医者はちょうど部下の医師たちを連れて部屋を出ていくところだった。
九条結衣を見た時、藤堂澄人の目は本能的に輝いたが、彼女の後ろについてきた松本裕司を見ると、その瞳は少し曇った。
この男はここ数日ずっと九条結衣の側にいる。確か彼の私設秘書だと言っていたはずだが。
なぜいつも自分の妻について回るんだ?
藤堂澄人の心には、理由もなく嫉妬の感情が芽生えていた。
「来たのか?」
藤堂澄人の声は淡々としていて、どこか皮肉めいた調子が感じられた。
九条結衣は彼を深い意味ありげに見つめ、冷たく返事をした。「ええ。」
松本(部外者)裕司:「……」
なぜか、この二人は小学生のように拗ねているように見えた。
奥様は病室に入る前まで、澄人さん澄人さんと親しげに呼んでいたのに、入室するとこんなに冷たくなるなんて?