このバカは今でも彼女という「柔らかい」柿を捏ねるしかできないのね。
でも彼女は藤堂瞳とこの件で無駄な議論をする気はなかった。どうせ藤堂瞳の目には、悪いことは全て九条結衣の仕業としか映らないのだから。
藤堂瞳のような人間とは、どんなに説明しても無駄なのだ。
「他に聞きたいことがあるのかしら。もしお兄さんのことなら、もう答えたわ。他になければ、切るわよ」
「ちょっと待って」
藤堂瞳は慌てて彼女を引き止め、もごもごと口を開いた:
「あの...お兄さんに聞いてもらえない?私が藤堂家に戻って会いに行ってもいいかって」
藤堂瞳はまだ藤堂澄人が記憶喪失になったことを知らなかった。以前植田涼が藤堂澄人の状態を尋ねに来た時も、彼女はこのことを話さなかった。
以前なら、九条結衣は彼女の伝言なんて伝える気もなかったかもしれない。でも今は...