945.藤堂瞳からの電話

藤堂澄人は老夫人と話をしながら、九条結衣に注意を向けていた。

彼女が自分を見ているのを目の端で感じ取り、その意味ありげな笑みを浮かべる様子に、彼は少し心が落ち着かず、思わず咳払いを二回した。

「よかった、よかった、よかった。あなたが帰ってきて、みんな安心したわ。結衣はこの間ずっと大変だったのよ。お腹に赤ちゃんがいるのに。おばあちゃんは本当に心配だったの。あなたは彼女をしっかり大事にしないといけないわよ」

老夫人が九条結衣の胎児のことに触れると、藤堂澄人の心の中で例の奇妙な嫌悪感が再び湧き上がってきたが、彼はその違和感を巧みに隠し、誰にも気付かれないようにした。

「はい、おばあちゃん」

老夫人は飛行機が離陸する前に、九条結衣から今日この時間に帰宅すると聞いていたので、早くから使用人たちに藤堂澄人と九条結衣の好きな料理をたくさん用意させていた。