「最悪、後で結衣に追い出させて物乞いにでも行かせてやる!」
老婦人は心の中で怒りながら考えた。
老婦人が中庭を離れてまもなく、山本叔母さんは遠くから九条結衣をじっと見つめ、突然手に持っていたミルクを大理石のテーブルに置くと、籐椅子から立ち上がった。
山本叔母さんは驚いて身体が強張り、九条結衣が中庭から出て、ガレージの方へ向かうのを見ていた。
すぐに、九条結衣が車でガレージから出てくるのを見た山本叔母さんは、顔を真っ青にして、慌てて車の前に飛び出して立ちはだかった。
「奥様、どちらへ行かれるのですか」
「会社よ、山本叔母さん、どいて」
九条結衣は顔を曇らせて言った。
山本叔母さんは焦った。九条結衣の陰鬱な表情を見て、奥様が会社へ行って旦那様と決着をつけようとしているのが分かった。