951.飛べない金糸雀

重役たちは藤堂澄人の言葉を聞いて、瞬く間に目を輝かせた。

藤堂グループの従業員の給料は、同業他社と比べて1、2倍も高いことは周知の事実で、中間管理職以上ともなれば言うまでもない。

もしこの時点で更に倍増するとなれば、より一層士気が高まることは間違いない。

千の言葉よりも金銭が実効性があることを、藤堂澄人はよく理解していた。そのため、給与アップの話を切り出した後、本題に入った。

各部門は最近の部門運営状況について藤堂澄人に詳細な報告を行い、最後に彼の指示を待った。

「よし、基本的に問題ない。君たちの計画通りに進めてくれ。途中で修正が必要な細かい問題については、松本秘書から初お知らせする」

藤堂澄人は言い終わると、視線を他の藤堂グループの株主たちに向けた。

藤堂グループの株式は基本的に藤堂澄人が握っており、他の株主が保有する株式はそれほど多くない。その中で、田中真斗は20%を占めており、そのうち10%は黒崎芳美から買い取ったものだった。

しかし、途中で増資を行った後、田中真斗の持株比率は若干希薄化され、他の株主はさらに少なくなった。

今、最も心が不穏なのは田中真斗だった。

以前、藤堂お婆様に負けた時は、自分が若く、人脈も不足していたため、当時の藤堂グループを手に入れられなかったと考えていた。

しかし今回は、彼は非常に自信があった。

藤堂お婆様は年を取り、藤堂澄人の妻は飛べない金のカナリアに過ぎず、全く心配する必要はないと思っていた。

結果として、自分は一羽の金のカナリアにやられてしまった。

藤堂グループを彼女が安定させただけでなく、増資も獲得し、自分の持株を大きく減らすことになった。

それだけでなく、藤堂グループが危機に瀕している時に、北条グループとの提携を実現させ、藤堂グループの株価を一気に引き上げた。

結果として、彼は何の利益も得られず、その女に大勢の前で叱られる羽目になった。

どれだけの人が裏で笑っているか分からない。

今、藤堂澄人が戻ってきて、彼が会議に来る前にニュースが流れ、その時点で藤堂グループの株価は急騰した。

藤堂澄人のように、姿を見せただけで株価が急騰するような人物は、本当に数少ない。

田中真斗は心中穏やかではなく、藤堂澄人を見る目つきも、いささか皮肉めいていた。