966.明らかに彼女の金と美貌を妬んでいる

アメリカ国籍を持つ日本人で、CIAに勤務していた経験もあり、CIA退職後、藤堂グループに高給で招かれた。

彼が藤堂グループで藤堂澄人に会った件について、松本裕司もその日、その男が社長室から出てくるのを見て初めて知った。

彼が社長と何を話したのか、誰も知らなかった。

しかし松本裕司は、尊敬する社長が自分を警戒していることを明確に感じ取った。

社長は彼を信用しなくなっていた。

松本裕司の心に、悲しみが広がった。

しかし考え直してみれば、社長は奥様のことさえ覚えていないのだから、秘書である自分を警戒するのも当然だろう。

そう考えると、松本裕司の心は少し楽になった。

しかしそれからわずか二日で、社長は木村靖子という女を刑務所から出所させた。彼には何の連絡も入っていなかった。

木村靖子は常々、松本裕司が九条結衣と一味だと思っていた。あの時、澄人が彼女を容赦なく刑務所に送り込んだのは、この忌々しい秘書が大いに関係していたはずだと。