976.大きな恥辱

しかし今や、九条結衣は藤堂澄人と決裂し、さらに藤堂グループまで計算に入れられた以上、澄人が彼女の味方になるはずがない。

だから今、木村靖子はとても嬉しかった。長年待ち続けて、ようやく希望が見えてきた。ついに九条結衣の前で胸を張れる時が来たのだ。

九条政はこの話を聞いて、心の中で自然と喜んだ。

父親として、娘に何度も損をさせられ、九条結衣の前では尊厳も何もなかった。

もし彼女が藤堂澄人の後ろ盾を持ち続けるなら、これからも九条結衣の影の下で生きていくしかなく、結衣がどんな波乱を起こすかわからない。

そう考えながら、九条政は木村靖子の手の甲を軽く叩いて言った:

「気をつけろよ。藤堂澄人は今は何も思い出していないから君に優しくしているだけだ。もしいつか記憶が戻って、また九条結衣の元に戻ったら厄介なことになる」

「わかってます、お父さん。ご心配なく、私はバカじゃありませんから」

木村靖子は得意げに眉を上げ、自慢げな表情で言った:

「澄人さんは私にリソースを提供して、芸能界で成功させてくれるって言ってくれたんです」

木村靖子の目は、ますます輝きを増していった。

「お父さん、私が国際的に有名な女優になって、澄人さんと結婚したら、誰も私が彼に釣り合わないなんて思わないはずです」

木村靖子は夢見心地になり、芸能界でのデビューが待ちきれない様子だった。

藤堂澄人の言葉を思い出し、木村靖子は手で自分の顔を触ってみた。確かに肌は荒れ、少したるみも出てきていた。

まだ27歳だというのに、この半年以上の獄中での更生生活で、お嬢様から中年のおばさんに変わってしまったのだ。

木村靖子はそのことを考えると、九条結衣への憎しみがさらに増した。

幸い、まだ素地は残っているし、お金にも困っていない。澄人さんが費用を出してくれるなら、美容整形で若返りをし、スキンケアもできる。それは難しいことではない。

木村靖子は藤堂家に入って藤堂奥様になることばかり考えていた。一方、九条政は九条結衣の影から解放されることを考え、大きくため息をついた。

そのため、父娘は横で黙ったままの木村富子に気付かなかった。

木村靖子の興奮が落ち着いてきた頃、彼女と同じように喜んでいるはずの木村富子が終始黙ったまま、物思いにふける様子であることに気付いた。

「お母さん、何を考えているの?」