「ふん!調べなければ、こんなにも調査に耐えられないとは知らなかったわ」
藤堂澄人の顔には、冷酷な色が浮かんでいた。
九条結衣は手の中の書類を強く握りしめ、大きな衝撃を受けたかのように、自嘲的な苦笑いを何度も漏らし、目に浮かぶ涙をなんとか押し戻した。
「藤堂澄人、よくやったわね」
彼女は手にした書類を藤堂澄人に向かって激しく投げつけ、そのまま事務所を出て行った。
秘書室の数人の秘書たちは、九条結衣が出てくるのを見て、顔に困惑の色を浮かべ、急いで仕事に目を落とした。
「奥様...」
松本裕司は口を開きかけたが、九条結衣の赤くなった目を見て、何を言えばいいのか分からなかった。
彼自身も社長のこの突飛な行動に困惑していた。奥様はさぞかし大きなショックを受けているだろう。
ああ、数日前まで記憶喪失後の社長は感情面で成長したと思っていたのに、記憶喪失前よりも悪くなっているようだ。