「あなた……」
「話し合いの余地はない」
「ダーリン……」
「……」
藤堂ビル。
きちんと仕立てられたスーツを着て、几帳面な身なりの男が、アタッシュケースを持って藤堂ビルに入り、受付に名刺を差し出した。
「こんにちは、藤堂社長とアポイントメントがあります」
受付は名刺を一瞥して、「かしこまりました、少々お待ちください」
電話は上階の秘書室を経由せず、直接社長室につながった。
すぐに最上階から返事があった。
「こちらは社長専用エレベーターになります。ご案内いたします」
受付は男を社長専用エレベーターまで案内し、「このエレベーターは社長室に直通です。どうぞ」
「ありがとうございます」
この男は初めて藤堂グループを訪れたが、社長専用エレベーターを使用できることに多くの人が興味を示し、この男が誰なのか、密かに様々な推測が飛び交った。