夏川雫の車に乗り込んだ後、彼女がまだ怒りに任せて投稿して人を罵っているのを見て、思わず近寄って覗き込んでしまった。
思わず笑いが漏れた。
夏川雫は横目で彼女を見て、「何を笑ってるの?私の前では無理に笑わなくていいわよ。藤堂澄人のクズ男を徹底的に叩いてやるから!」と言った。
「ネットの人たちの言う通りよ。あなたはあの時、藤堂グループを乗っ取ってしまえばよかったのよ。彼の帰りを待つ必要なんてなかったわ。彼の財産を持って再婚すれば良かったのよ。そうすれば帰ってきても女遊びなんてできないでしょうに」
夏川雫は、以前自分が目が眩んでいて藤堂澄人が更生したと思い込み、結衣のために長い間喜んでいたことを後悔していた。
夏川雫は罵れば罵るほど腹が立ち、腹が立てば立つほど罵りたくなった。
もし昔のようなボタン式の携帯電話だったら、きっとボタンが壊れるまで押していただろう。
「言っておくけど、藤堂澄人みたいなクズ男は、犬も糞食うのを止められないのと同じよ。もし彼が変われるなら、木村靖子という糞を食べ続けたりしないわ。味も変えずにね」
九条結衣:「……」
夏川雫は怒りに没頭し、注意はネット上の藤堂澄人と木村靖子を罵る投稿に集中していたため、車に乗ってから九条結衣の表情が晴れやかになっていることに全く気付いていなかった。
夏川雫がまだ十分に罵り足りていないようなので、九条結衣は思わず近寄って彼女のスマートフォンを覗き込んだ。
まぶたが激しく痙攣した。
細長い腕を夏川雫の肩に回し、こう言った:
「罵るのはいいけど、木村靖子だけにしておいて。私の旦那様のことは少し手加減してね」
夏川雫はまだ怒りに燃えていて、九条結衣の軽やかな口調に気付かず、その言葉を聞いてさらに怒りが増した。
「あの人が外で女と遊んでるのに、まだ庇うの!」
彼女は手を止めて九条結衣の方を向き、その整った美しい顔には強い非難の色が浮かんでいた。
「結衣、あなた変わったわ。もう昔の天下無敵の結衣じゃないわ!」
そう言うと、また携帯を手に取り、ネット上で藤堂澄人と木村靖子という「クズカップル」を罵り始めた。
次の瞬間、スマートフォンは九条結衣に取られ、夏川雫は怒りで毛が逆立ちそうになった。
「結衣!」
「ちょっと話があるの」