今回のチャリティーディナーには、各州各市の大企業の社長たちが集まっていた。九条グループの会長として、九条政も当然招待されていた。
しかし、木村富子母娘は自分の立場をわきまえていた。
あれは大統領主催のチャリティーディナーであり、彼女たちのような正式な立場のない者が招待されるはずがなかった。
また、大統領のディナーに参加するのは正妻だけであり、愛人が出る幕ではなかった。
そのため、木村富子は行きたいと思っていても、恥をかくようなことは自らしようとしなかった。
今、九条政が自ら提案したことに、二人は当然ながら喜びを隠せなかった。
しかし喜びと同時に、やはり不安もあった。
大統領府のディナーは、ビジネス界のチャリティーディナーとは違う。それは大物たちの宴会だった。
どれほど有頂天になっていても、木村母娘はこの時、現実的な問題を無視することはなかった。
「お父さん、あれは大統領府のディナーよ。私と母の立場はやっぱり...あまり体裁が良くないわ。私たちが行くことであなたに非難が集まるんじゃないかしら?」
娘の目に期待の色が見えながらも、まず自分のことを考えている様子に、九条政はさらに心を動かされ、いとおしく思った。
彼は首を振り、言った。
「大統領府の招待状には家族同伴可と書いてある。私と君のお母さんは結婚式はしていないが、婚姻届は出している。彼女は今、私の正当な妻だ。誰が非難できるというのか?」
ずっと結婚式を挙げたいと思っていたのは、業界のすべての人に木村富子はもう愛人ではなく、小林静香はもう九条夫人ではないということを伝えたかったからだ。
木村靖子が欲しかったのはまさに九条政のこの言葉だった。
彼がそう言った以上、母娘は喜んで承諾するしかなかった。
「ありがとう、お父さん」
「ありがとう、政さん」
その後、九条政は他の用事で出かけ、木村富子は木村靖子の部屋に行った。
木村靖子はちょうどフェイスマスクをしていて、木村富子はにこにこしながら近づいた。
「靖子、お父さんが今回私たちを大統領府のディナーに連れて行ってくれるけど、澄人もあなたを連れて行くかしら?」
これを聞いて、木村靖子は心の中で思わず白目をむき、この実の母親が良く言えば天真爛漫、悪く言えば愚かだと思った。