056 道乃啓元の動きが無意識に止まり、手首は神崎卓礼が残した用心棒に掴まれた

確かにそうだった。当時、夏川清未は夏川清翔のことを知らなかったが、夏川清翔が道乃琪を連れて夏川清未の前に現れたのだ。

夏川清翔は夏川清未の前に跪いて泣きながら謝罪し、清未に許しを請うた。もし許してくれなければ、その場で自害すると言い、もう清未の顔を見る資格もないと言った。

長年叔母と呼んでいた道乃琪が、自分の夫の娘だったとは。夏川清未がどれほど怒り狂ったか想像に難くない。

折悪しく、夏川清翔が跪いている姿を道乃啓元に見られてしまい、清未が清翔を虐げているのだと誤解し、即座に離婚を切り出した。

夏川清未はプライドの高い性格だったが、夫の心が離れてしまった以上、強引に引き止めることはせず、泣きも騒ぎもせずに署名した。

道乃漫は冷笑した。泣く子には飴をやるとはこのことだ。