医師と看護師はもちろん今すぐお金を受け取りたがっていた。そうすれば安心できるからだ。
道乃漫が断る前に、看護師は急いで神崎卓礼のカードを受け取り、「こちらで会計をお願いします」と言った。
仕方なく、道乃漫は神崎卓礼についていくしかなかった。
瑭子は眉をひそめた。彼もそんなに大金を持ち歩いているわけではなく、助けたくても手の施しようがなかった。
家族の署名と入院費用の問題が解決すると、医師はさっそく手術室に入った。
道乃漫が戻ってきたとき、手術室にはすでに手術中を示すランプが点灯していた。
瑭子の電話が鳴り、相手は何かを急かしているようだった。
道乃漫は顔をこすりながら言った。「瑭子、先に用事を済ませてきて」
「大丈夫だよ、僕は——」
道乃漫は首を振った。「心配しないで、私は大丈夫。ここで母が出てくるのを待たないといけないの。さっきあんなに大勢が道乃琪の写真を撮ろうとしていたから、早く戻って対処した方がいいわ。先を越されちゃうわよ」