「すみません。」道乃漫は衝突で頭がくらくらして、後ずさりした。
ぶつかった胸板には何か懐かしい感触があり、その清々しい香りまでも見覚えがあった。
しかし道乃漫は今、相手の顔を見る余裕もなく、エレベーターに逃げ込もうとしたが、突然相手に抱きしめられてしまった。
相手の腕は鉄のように強く、彼女をしっかりと抱きしめていた。
道乃漫は思いもよらなかった。人にぶつかったと思ったら痴漢に遭遇したのかと思い、手を出そうとした瞬間、頭上から聞き覚えのある声が聞こえた。「私を見るなり飛びついてくるなんて、そんなに会いたかったのか?」
この声!
道乃漫は驚いて顔を上げると、彼女がぶつかった相手は神崎卓礼だった!
彼女の驚きで呆然とした様子を見て、神崎卓礼は低く笑い出した。
この女は、会うたびに違う一面を見せるな。