「お母さん、そんなことしないで。話します、話します」道乃漫は仕方なく、概要を話した。「道乃琪が監督とのキャスティングカウチを試みたんですが、途中で後悔して、監督に重傷を負わせてしまったんです。今は全ての証拠が彼女に不利な状況です。お父さんは道乃琪が刑務所に入るのを見たくないし、芸能活動にも影響が出るのを避けたいから、私に身代わりになってほしいと言うんです」
夏川清未は怒りで体を震わせながら、「道乃啓元、この畜生!よくもそんなことができるわね!」
彼女は後悔していた。当時、道乃漫に苦労をさせたくないからと、道乃家に残したことを。
この子は何も言わなかったけれど、これまでの年月、一体どれほどの辛い思いをしてきたのか、まだ分からないのだ!
こんなことが起きても、道乃啓元は平然と道乃漫に罪を被せようとする。明らかにこういうことを何度もやってきて、慣れているのだ。自分の偏った心がどれほどひどいものか、全く気付いていない。
「清未、道理をわきまえてくれ。道乃漫はお姉さんなんだ。こんな重要な時に琪を助けないで、誰が助けるんだ?それに、琪はこの何年も辛い思いをしてきたんだ。君も知っているだろう?もう彼女を裏切ることはできない」道乃啓元は口先ばかりで、道乃漫にどれほど申し訳ないことをしているか考えもしない。
夏川清未は目を剥いて、「あなたは道乃琪に申し訳ないと言うけど、私や道乃漫には申し訳ないと思わないの?私はあなたと苦労を共にして、やっと良い暮らしができるようになったのに、あなたは夏川清翔と不倫して、私と離婚した。道乃漫が私と一緒なら苦労するから、あなたの元に置いたのに、あなたは何をした?道乃漫が難関大学に合格したのに、休学させた。服飾デザインを学んでいたのに、道乃琪のアシスタントにさせた。道乃琪だけがあなたの娘で、道乃漫はそうじゃないってこと?夏川清翔の放った屁まであなたには香りに感じられるのに、私の大切な娘はこんな目に遭わされる!」
夏川清未は怒りで震えながら、左手の点滴針を引き抜き、点滴スタンドを持ち上げて道乃啓元に投げつけた。「出て行きなさい!みんな出て行きなさい!誰も私の娘を害することはできない!」
投げられた点滴スタンドは、途中で地面に落ちた。
夏川清未は体が弱く、そんなに力はなかった。