088 神崎が親切で、わざわざ見舞いに来てくれたわ

それどころか、夏川清未の将来で彼女を脅すまでに！

「忘れるな、お前には夏川清未という母親だけじゃなく、俺という父親もいるんだ！俺がいなければ、お前もいないんだぞ！俺のすることには全て理由がある、お前を害するわけがない！」道乃啓元の言葉に道乃漫は嘲笑した。

彼がここまで厚かましく言うなら、道乃漫に何が言えるというのか？

「知らないぞ！」道乃啓元は道乃漫の言葉を遮って言った。「あれはお前の妹だ、この件は必ず手伝わなければならない。神崎卓礼にどう言うかは知らないが、お姉さんとして妹を助けるのは当然の責任だ。」

道乃漫は「ふん」と鼻で笑い、そのまま電話を切った。

道乃啓元は二秒ほど呆然とした。あの生意気な娘め、自分の電話を切りやがった！

道乃啓元は怒りながらもう一度かけ直した。

道乃漫は着信を見ても出ず、すぐに携帯の電源を切った。

道乃啓元が電話の向こうでどれほど怒っているかなど気にもせず、彼女はすでに病院に戻っていた。

病室の入り口に近づくと、周村成辉と篠崎汇人が両側に立っているのが見えた。まるで門番のようだった。

「二人とも、どうしたの？」今日はどうして入り口でこんなにピンと立っているの？

朝出かけた時は、二人ともまだ椅子にだらしなく座っていたのに。

「何でもないよ、何でも。」周村成辉は笑いながら言った。「今日の面接はうまくいった？」

道乃啓元に会わなければ、とてもうまくいったと言えたのに。今となっては、自分がまだ神崎創映で働けるかどうかも分からない。

広報部が道乃啓元の言葉を信じて、考えを変えてしまうかもしれない。

ずっと電源を切っていたから、たとえ向こうが考えを変えても、連絡のしようがない。

道乃漫は急いで電源を入れ、周村成辉に首を振って「私にも分からない」と答えた。

周村成辉は不思議に思った。それはおかしい。神崎若様がいるのに、うまくいかないはずがない。

彼は知っていて聞いたのに、道乃漫が確信を持てないなんて。

周村成辉は笑って言った。「とりあえず中に入ったら？奥様も一日中あなたのことを気にしていたよ。」

道乃漫は頷き、ドアを開けかけたところで中から声が聞こえ、その場で固まった。

夏川清未のベッドの横の椅子に、背の高い男が座っていた。その人物は神崎卓礼だった！