069 お前に刑務所に入ってほしい

「その10万元は命を救うお金なのに、あなたは人の命を危険にさらそうとしているのよ。夏川清翔、何か言いなさいよ！」

「近寄らないで、誰も私に触らないで！離れて！」夏川清翔は髪が乱れて狂女のようになっていた。「私がやったんじゃない！全部道乃漫よ、道乃漫が私を陥れたの！助けて、啓元、助けて、早く彼らを追い払って！」

しかし道乃啓元は必死に車の中に逃げ込んでいた。外の記者たちは黒山の人だかりで凶暴で、まるでゾンビの群れのようだった。彼は外に出る勇気がなく、夏川清翔と同じ目に遭うのを避けたかった。

もし道乃漫がここにいたら、きっと不思議に思わないだろう。

なぜなら最初から最後まで、道乃啓元は自分以外の誰も愛していなかったから。

道乃琪も車の中にいて、窓際に寄りかかって唇を噛んでいたが、降りる勇気はなかった。

ただ夏川清翔が人々に囲まれ、激しく写真を撮られる姿を見つめることしかできなかった。今の彼女の惨めな姿は、まるで路上の物乞いのようだった。

記者たちが十分に撮り終え、もう撮るものがなくなると、瑭子が「もう行こう、撮るものはないわ」と言った。

すると記者たちは一斉に散っていった。

道乃啓元と道乃琪はようやく車から降り、地面に這いつくばって泣いている夏川清翔を見た。

べたべたした髪が乱れて顔にかかり、顔を上げると、額にはカメラのレンズで付いた青あざがいくつも見えた。

道乃啓元は嫌悪感を抑えながら、夏川清翔を車に乗せ、ウェットティッシュで手を拭いてから、車を発進させて家に向かった。

家に着くまで、道乃啓元は夏川清翔の顔を見ようともしなかった。

路上の物乞いのような姿は、普段見慣れているぶりっ子の妻の姿とはまるで違っていた。

夏川清翔がシャワーを浴び、身なりを整え、何層もの化粧品を塗り、メイクをして、いつものぶりっ子の姿に戻ってようやく、道乃啓元の表情は和らいだ。

しかし、まだ心の中では何か引っかかるものがあった。

あの日病院で、病人らしい顔をした夏川清未を見た。

夏川清未はすっぴんでメイクをしていなかったが、病気で顔色は同じように青白かったものの、肌は依然としてみずみずしく、化粧をしていない方が却って可憐な印象を与えていた。夏川清翔のように、化粧をしないとあんな恐ろしい顔つきになるのとは大違いだった。