075 もし彼が承諾したら、神崎若様は彼を芸能界で一歩も動けなくできる

「道乃琪が大丈夫だなんて誰が言ったの?」道乃漫は青ざめた顔で笑った。「確かに刑務所には行かなくて済んだけど、この件は彼女のキャリアに大きな打撃を与えたわ。六堂寒礼がセクハラはなかったって言っても、ネットユーザーは信じないし、ファンは疑うでしょう。映画会社、プロデューサー、監督、それに広告の代理店も、もう彼女を起用するリスクは取れない。彼女の評判は地に落ちてしまったから」

「これは単なる小さなスキャンダルじゃないわ。これだけ長く騒ぎが続いたんだから、彼女は数年は這い上がれないでしょう。でも父は彼女を可愛がっているから、道乃琪にこんな辛い思いをさせたくないの。だから六堂寒礼に条件を出したのよ。もし六堂寒礼が、私がやったことだと言って、彼の部屋に忍び込んだのも私で、暴行したのも私だと認めて、道乃琪への非難は全て誤解で中傷だったと言えば、道乃琪は無事になれる。それどころか、被害者として立ち直ることもできるって」