「分かってるわ。もう気にしてないから」道乃漫は夏川清未が横になる前に言った。「お母さん、明日の午前9時に面接があるの。行かなきゃいけないけど、2時間くらいで終わると思うわ。お昼には戻ってくるから。何かあったら、周村兄貴と篠崎兄貴にお願いしないといけないけど」
「安心して面接に行きなさい」道乃漫が道乃琪のアシスタントを辞めることを知って、夏川清未も喜んでいた。「ここは何も問題ないわ。トイレも、ゆっくりならできるし。傷も順調に治ってきて、もうすぐ抜糸できそうよ。普通のことなら自分でできるから、心配しないで」
***
翌日、道乃漫は約束の時間通り、15分早く神崎創映に到着した。
広報部の場所を聞いて向かうと、まだ10分あった。
「こんにちは。道乃漫と申します。今日9時の面接の約束をしていました」道乃漫は広報部の職員に尋ねた。
「ああ、少々お待ちください」その職員は前方の独立したデスクに向かって声をかけた。「渡邉さん、面接の方が来られました」
呼ばれた人は書類を整理していたが、声を聞いて近づいてきた。
「こんにちは。道乃漫と申します。9時の面接の約束をしていました」
「こんにちは。武田部長のアシスタントの渡邉梨子です」渡邉梨子は時計を確認した。「武田部長は今到着したばかりで、まだ準備中です。面接まであと10分ありますので、少々お待ちください」
渡邉梨子は道乃漫を二面がガラス張りの小会議室に案内し、座るように促した。「履歴書はお持ちですか?」
「はい」道乃漫は履歴書を渡した。
「しばらくここでお待ちください。後ほど部長室にご案内します」渡邉梨子は履歴書を持って立ち去った。
道乃漫は時間を確認した。約2分後、渡邉梨子が戻ってきて、部長室へ案内した。
「武田部長、道乃さんが面接に来られました」渡邉梨子はドアの前で告げ、道乃漫を中へ通した。
道乃漫は広報部の部長がこんなに若いとは思わなかった。二十七、八歳くらいに見え、せいぜい三十歳を超えていないだろう。
この年齢で広報部の部長になれるということは、本物の実力があるということだろう。スーツ姿で、エリートの呼び名にふさわしい。
しかも武田部長はルックスも悪くない。神崎卓礼のような妖艶な美貌には及ばないが、一般人よりはずっとハンサムだった。