彼女はまだ面接に行っていないし、採用されるかどうかもわからない。
たとえ採用されたとしても、あんな大きな会社で、神崎卓礼が彼女に気付くはずがない。
そんな厚かましいことを考えるつもりはなかった。
「そう、神崎創映よ。ちょうど広報部なの。私は普段から彼らの広報部とよく付き合いがあるわ」と瑭子は言った。
芸能人のゴシップなどで、広報が早めに対応する場合は、彼が情報を公開する前に連絡を取って、条件を話し合う。
広報の対応が遅い場合は、彼が情報を公開した後でも、やはり連絡を取らなければならない。
そのため、各社の広報チームとは、瑭子は本当に馴染みが深かった。
「広報部のマネージャーとは少し付き合いがあってね、今ちょうど人を募集していると知っていたから、あなたを推薦したの。でも、私の面子はここまでよ。後は自分次第、採用されるかどうかはあなた次第。少なくとも神崎創映の方では、お父さんにはそんな影響力はないわ」と瑭子は言った。「でも、あなたの価値を高めるために、道乃琪を出し抜いた件について話したわ。もともとこれらは全部あなたが私にアドバイスしてくれたことだし、その頭の良さを見ても、広報の仕事に最適よ。私がこのことを相手に話したことについて、気にしないでね」