073 六堂寒礼が目覚めた

彼女はまだ面接に行っていないし、採用されるかどうかもわからない。

たとえ採用されたとしても、あんな大きな会社で、神崎卓礼が彼女に気付くはずがない。

そんな厚かましいことを考えるつもりはなかった。

「そう、神崎創映よ。ちょうど広報部なの。私は普段から彼らの広報部とよく付き合いがあるわ」と瑭子は言った。

芸能人のゴシップなどで、広報が早めに対応する場合は、彼が情報を公開する前に連絡を取って、条件を話し合う。

広報の対応が遅い場合は、彼が情報を公開した後でも、やはり連絡を取らなければならない。

そのため、各社の広報チームとは、瑭子は本当に馴染みが深かった。

「広報部のマネージャーとは少し付き合いがあってね、今ちょうど人を募集していると知っていたから、あなたを推薦したの。でも、私の面子はここまでよ。後は自分次第、採用されるかどうかはあなた次第。少なくとも神崎創映の方では、お父さんにはそんな影響力はないわ」と瑭子は言った。「でも、あなたの価値を高めるために、道乃琪を出し抜いた件について話したわ。もともとこれらは全部あなたが私にアドバイスしてくれたことだし、その頭の良さを見ても、広報の仕事に最適よ。私がこのことを相手に話したことについて、気にしないでね」

「大丈夫よ、私のためを思ってくれたんでしょう。私は以前ただのアシスタントで、この方面の仕事経験がないから、もしあなたがこれらのことを話さなければ、相手は絶対に私を採用しないわ」と道乃漫は気にしていなかった。

「安心して、相手にはこの件を口外しないように言ってあるわ。その人は他のことは別として、約束は守る人だから」と瑭子は付け加えた。

「実は、話が広まっても構わないわ」と道乃漫は気にしていなかった。「どうせもう彼らとは関係が切れているし。言わなくても、彼らは私が仕組んだと思っているでしょうから」

「本当に...」瑭子は怒りを抑えきれない様子で、「どんなに罵っても気が済まない!」

道乃漫は全く気にせず、「そうそう、面接はいつ行けばいいの?」

「明日よ」と瑭子は言った。「朝9時、大丈夫?」

「今は私が向こうにお願いする立場なんだから、都合が悪いなんて言えないでしょう」道乃漫が言い終わるか終わらないかのうちに、瑭子の携帯が鳴った。