道乃啓元は道乃琪を連れて去り、神崎卓礼は険しい顔で藤井天晴に言った。「全員に伝えろ。今後、道乃啓元の予約は一切受け付けるな!」
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道乃啓元は自分が神崎卓礼のブラックリストに入れられたことを知らず、ただ神崎卓礼が自分の面子を潰したことで、大恥をかいたと感じていた。
「お父さん、神崎卓礼がお姉さんをそこまで庇うってことは、もしかして...」道乃琪は必死に嫉妬心を隠そうとした。
どうして道乃漫はこんなに運がいいのか、神崎卓礼と関係を持てるなんて。
「そんなはずがない!あんな女を神崎卓礼が気に入るわけがない。遊び相手に過ぎないさ。男は遊び相手でも多少は庇うものだ」道乃啓元は不機嫌な顔をした。
「でも、どう考えてもお姉さんは神崎卓礼と関係を持ったわけでしょう。お父さん、お姉さんに神崎卓礼に話してもらって、私に役をもらえないかしら?そんなに高望みはしないわ。女二号で十分。正直言えば、事件が起きる前の私の視聴率的な地位なら、主演でも選り好みできたのに」
これは全部、道乃漫のせいだ!
明らかに、道乃啓元も同じように考えており、すぐに道乃漫に電話をかけた。
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道乃漫は既に病院への道中だったが、道乃啓元からの着信を見て、心が疲れ果てた。
でも出ないと、何をするか分からない。
彼女は目尻を擦りながら、電話に出た。「お父さん」
この一言には、彼女自身にしか分からない、どれほどの不本意さが込められていた。
道乃啓元はかえって得意げな様子で、どうあっても道乃漫は自分の掌の上で、どうにもできないのだと、「家に戻ってこい。話がある」
道乃漫は目を転がして、「暇がない」
「暇がない?いいだろう。お前に暇がないなら、俺が病院で夏川清未と話でもしようか。お前にボディーガードが二人いるのは知ってるが、廊下で大声で叫べば、夏川清未には聞こえるだろう。彼女だけじゃない、階全体の人間に聞こえる。お前の恥ずかしい過去が皆に知られても構わないなら、来なくていい」
道乃漫は怒りで心臓の鼓動が速くなった。彼に殴られても罵られても耐えられるが、夏川清未を人質に取られるのは我慢できなかった!
かつての妻を人質に、実の娘を脅す。
道乃啓元によくそんなことができるものだ!
「分かりました。今から戻ります」道乃漫は冷たく電話を切った。