081 与えなければ奪い、奪えなければ盗み、盗めなければ壊す

渡邉梨子は眉をひそめた。「あなたは道乃漫の父親だからって、私たちの部長とどんな関係があるんですか？予約もないし、部長に会う理由も言えないなら、私からは伝えられません」

この人、頭がおかしいんじゃないの？

自分が誰だと思ってるの？武田部長に会いたいって言えば会えると？

まさか彼女は「部長、道乃漫の父親だからって会いたがってる人がいるんですけど」なんて言うべきだと？

図々しすぎるでしょ！

「伝言を頼んでるだけなのに、その態度は何だ！融通が利かない奴だな。神崎創映がこんな社員を雇うなんて、うちの会社なら即刻クビだ。いや、そもそも採用試験にも受からないレベルだ！」道乃啓元は声を荒げた。

渡邉梨子は呆れて笑ってしまった。「神崎創映のような大企業に入れたのに、あなたの会社なんか興味ありませんよ。誘われても行きませんから！」

この人が本当に道乃漫の父親？

どんな人なの？

完全に狂ってる！

道乃漫はとても礼儀正しいのに、どうして父親がこんななの？

渡邉梨子は思わず道乃漫の人柄にも疑問符を付けざるを得なかった。

「何という口の利き方だ！これが神崎創映のおもてなしか？」道乃啓元は激怒した。

武田立则は事務所で声を聞き、眉をひそめて出てきた。道乃啓元が外でしつこく食い下がっているのを見た。

「渡邉、どうしたんだ？」武田立则は尋ねた。

渡邉梨子は不快な表情で「この方は予約もないのに、あなたに会いたい用件も言わずに、ただ道乃漫の父親だからって会わなければならないと言い張っているんです」

「武田部長、あなたの部署の社員はダメですね！こんな質の低い対応で、どうやって神崎創映に入ったんですか？お客様にこんな無礼な態度をとるなんて、知らない人は神崎創映の社員がみんなこんなレベルだと思うでしょう！」道乃啓元のこの言葉に、他の同僚たちも不快感を覚えた。

渡邉梨子は横で怒りを抑えきれず、悔しさで言葉を飲み込んだ。

この人、本当に頭がおかしいんじゃない？

他社の他部署に来て、人の社員にあれこれ指図するなんて！

「はは」武田立则も呆れた。「渡邉、戻っていいよ。大丈夫だから」

渡邉梨子は頷いたが、心の中では道乃漫への不満も募っていた。

道乃啓元はそれを聞いて、不機嫌になった。