受付嬢はようやくためらいながら言った。「彼女は広報部に応募したようです。」
道乃啓元は頷き、すぐに広報部へ向かおうとしたが、受付嬢に止められた。「予約はありますか?」
「ある。10時半に制作部のマネージャーと面会の約束がある。」
受付嬢は確認した後、やっと彼らを通した。
「お父さん、もしお姉さんがここで働くことになったら、叔母の治療費のために私たちのお金を使わなくて済むけど、そうしたら彼女は私たちをもっと見下すようになるんじゃない?」エレベーターの中で道乃琪が道乃啓元に言った。
道乃啓元は広報部のある階のボタンを押し、冷たい声で言った。「だから、彼女を順調に入社させるわけにはいかない。ここで働きたいって?そう簡単にはいかないよ!」
***
「神崎若様。」神崎卓礼が会議室から出てくるのを見て、藤井天晴は後を追いかけた。「先ほど道乃漫が面接に来て、採用が決まりました。」
神崎卓礼は誇らしげに言った。「それは当然だろう?彼女はそれだけ優秀なんだから。」
「……」藤井天晴は彼の得意げな表情を見て、心の中で思った。道乃漫に対してそんなに自信があっても、本人は知らないのに、何を得意がっているんだろう?
「ですが道乃漫が帰る時に、道乃啓元と道乃琪に出くわしました。彼らは制作部のマネージャーとの約束で来ていて、道乃琪の役を獲得しようとしているようです。」藤井天晴は言った。「1階で出会った時、道乃啓元は道乃漫を殴ろうとしましたが、道乃漫は避けることができました。」
笑みを浮かべていた神崎卓礼の表情が一瞬にして曇り、全身から冷気を放った。「なぜ今まで言わなかった!」
殴られなかったのは、彼の道乃漫に実力があったからだ!
しかし道乃漫が虐められた時に、自分がいなかったなんて!
藤井天晴は神崎卓礼の不機嫌な睨みに震え上がった。「会議中でしたので、私は……」
「今後は時間、場所、私が何をしているかに関係なく、道乃漫に関することは即座に第一報で知らせろ!」神崎卓礼は険しい表情で遮った。
「はい。」藤井天晴は急いで承諾し、しっかりと心に刻んだ。「道乃啓元は受付に道乃漫がどの部署に応募したのか聞いて、今頃は広報部に行っているはずです。」
道乃啓元が広報部に何をしに行くというのか?