120 案の定、神崎卓礼は本当に彼女の方へ歩いてきた

はっきりとは言わなかったのに、彼の言い方だと、まるで自分が移り気で、すぐに心変わりするみたいじゃないか。

ふん!ふん!

彼女と神崎卓礼の間には何もないし、たとえ誰かと付き合うことになっても、それは移り気でも心変わりでもない!

でも実際に口に出すと、道乃漫は怖気づいて、「いいえ、私は彼の申し出を断りました」と言った。

武田立则に送ってもらうくらいなら、神崎卓礼に送ってもらう方がましだ。

彼女は武田立则とプライベートな関係を持ちたくなかったし、柴田叔母に誤解されたくなかった。

柴田叔母が自分を気に入らないのなら、彼女も武田立则にそういう気持ちはないし、誤解されて面倒を招きたくなかった。

それに、嫌われているのを知りながら近づくような人間じゃない。

神崎卓礼の表情がようやく和らいだ頃、武田立则が振り向いて、ついに近くにいる神崎卓礼に気付いた。