「分かりました」葉月星は急いで出て行った。
道乃漫は神崎卓礼のオフィスに長時間座っていたが、誰も水一杯すら持ってきてくれなかった。
こんな些細なことは我慢できないわけではないが、今は本当に喉が渇いていた。
神崎卓礼がいつ会議を終えるか分からず、このままでは声が枯れた状態で自分の企画について話すことになってしまう。
道乃漫は仕方なく外に出て、向かいの秘書室を探した。
ちょうど葉月香音のデスクが入口近くにあった。
「すみませんが、お水を一杯いただけませんか?」道乃漫は葉月香音のデスクの前で立ち止まった。
葉月香音は一瞥した後、また爪やすりを続けながら、「忙しいんです。給湯室で自分で汲めばいいでしょう?」と言った。
道乃漫は眉をひそめた。初日とはいえ、道乃啓元の関係で広報部の人々が自分に反感を持っているのは理解できた。