「今月のボーナスは没収だ」神崎卓礼はペンを机の上に投げ捨てた。「私が不在の時に、こんな小物どもが道乃漫に無礼を働くなんて、お前の見本としての役割が不十分だったということだ。彼女の重要性を理解させられていない」
「はい」藤井天晴は急いで頷いた。「葉月香音の件はどう処理しましょうか?」
葉月香音は自分がバカなだけでなく、彼の一ヶ月分のボーナスまで失わせた。藤井天晴が彼女を許すはずがなかった。
「半年分のボーナスを没収し、警告書を2通。秘書室の他のメンバーには、それぞれ警告書を1通ずつ」神崎創映の規定では、1年以内に警告書が3通累積すると解雇される。
そして、1年の有効期限が過ぎても、警告書を受けた事実は記録に残り、将来他の会社に転職する際の大きな汚点となる。
神崎創映の警告書制度を知らない会社はほとんどない。
警告書を受けるということは、重大な過ちを犯したという証明になる。
人材は豊富で、求職者も多い。会社は重大な過ちを犯した人材を必要としない。
しかも、転職とはより良い待遇とキャリアを求めることだ。なぜ高給や高いポジションを、以前の会社に損害を与えた人物に与える必要があるのか?
そのため、神崎創映の従業員は警告書を洪水や猛獣のように恐れており、解雇よりも恐ろしいものとされている。
解雇は怖くない。怖いのは記録に残るこれらの汚点だ。
将来転職のチャンスがあるかどうか、誰も神崎創映で一生働けると断言できない。
「秘書室のメンバーに伝えに行け。葉月香音を例にして。私の言葉と叔父の言葉、どちらが効力を持つのか聞いてみろ。叔父は会社でどんな立場にあって、彼女たちに命令できる権限があるのか?私が不在の時は、私の許可なく誰も執務室に入れないと言った。彼女たちはそれを知っていながら、葉月香音がそれを理由に道乃漫に言い掛かりをつけた。なぜ大澤依乃を入れて、道乃漫を追い出すのを手伝ったのか?これは故意の違反だ。もし叔父の言葉が私の言葉より効力があるなら、叔父に仕事を求めに行けばいい。私の秘書室には彼女たちの居場所はない」神崎卓礼は冷たく言った。
藤井天晴は直ちに神崎卓礼の指示に従って行動した。
***
道乃漫が広報部に戻ると、意外にもオフィスは賑やかだった。
部署の同僚たちが、彼女が朝見かけた空の机の周りに集まっていた。