救急外来の入り口まで来ると、道乃漫は立ち止まった。「神崎若様、お気をつけてお帰りください」
神崎卓礼は眉を上げ、心の中で苦笑した。なんて薄情な子だ!
「ここまでで見送るつもりか?」神崎卓礼は道乃漫が反応する前に、彼女の手を掴んでしっかりと握った。
道乃漫は振り解こうとしたが、できなかった。
彼女は干笑いを二つ浮かべ、「そんなはずありません。ただ先に言っておこうと思って」
「ふん」神崎卓礼が彼女を信じるわけがない。
彼女のこの薄情な様子を見ていると、神崎卓礼は胸が痛んだ。
自分が先に落ちてしまったのが悪い。
この子が小狐だと分かっていながら、先に自分の心を開いてしまった。
道乃漫は彼の笑いに心が虚しくなり、距離を置きたいと思いながらも、この大物を怒らせるのが怖かった。