146 彼女にできるのに、なぜあなたにはできないの?

皆が驚いた。藤井天晴は社長付きの秘書なのに、なぜ自ら書類を持って来たのだろうか?

一体どんな書類なのか、そんなに重要なものなのか!

しかも、そんなに重要な書類が、こんなにたくさんあるなんて!

道乃漫は、皆の疑惑の目の中、藤井天晴が大澤依乃のデスクに向かい、道乃漫のデスクにある書類の山よりも高い書類の束を、大澤依乃のデスクに置くのを見ていた。

「秘書室の藤井さんが休みで、人手が足りないんです。武田部長に聞いたところ、あなたは入社したばかりで広報部の仕事に慣れている最中で、暇だと聞きましたので、ちょっと借りることにしました。これらの書類の処理をお願いできますか?申し訳ありません」藤井天晴はこれらの書類を運んできて、汗をかいていた。

どうやってこんなに多くの書類を見つけたのか、天のみぞ知る。

今日、社長は朝早くから来て、大澤依乃に重要ではないが細かくて時間のかかる仕事を探すように指示した。

藤井天晴はすぐに理解した。社長は道乃漫の仕返しをしているのだ。

道乃漫は自分で対処できると言い、社長に介入させないと言ったのに。

しかし社長は彼女の件には介入しないものの、大澤依乃の件には介入できるのだ。

道乃漫をいじめたと思って、社長が許すと思ったのか?

しかしこれは藤井天晴を困らせた。

どこからそんなに多くの書類を見つけてくればいいのか。

社長秘書室は書類処理が常に迅速で、遅延は許されない。

そもそも秘書室に来る書類に重要でないものなどあるはずがない。

仕方なく、藤井天晴は直接文書保管室に行き、各部署の数年前の書類を全て探し出した。すでに解決済みの案件でも構わない、大澤依乃にもう一度やらせればいい。

大澤依乃は目の前の書類の山を見て、神崎卓礼が意図的に彼女を困らせているのだと分かった。

しかし彼女は道乃漫のことは考えもしなかった。

道乃漫が神崎卓礼を誘惑しているというのは信じられる。

しかし神崎卓礼が道乃漫に目を向けるなんて?

死んでも信じられない。

神崎卓礼を好きな女性は山ほどいるのに、どうして彼があんなに目立たない女を見上げるはずがない。

大澤依乃は道乃漫を見下していて、一度も恋敵として見なしたことがなかった。

道乃漫が神崎卓礼を誘惑するなんて、不愉快に感じるだけだった。

道乃漫如きが、何の資格があるというの!