145 痛みは夢じゃないという証

道乃漫は驚いて彼を見つめた。キスならキスだけど、どうして噛むの?

唇をまだ彼に咥えられたまま、彼は低く掠れた声で笑っていた。

磁石と玉器が触れ合うような音が、一つ一つ彼女の唇を軽く叩き、まるで口の中にまで入り込んでくるようだった。

「痛かった?」神崎卓礼は楽しそうに目を細めた。

「じゃあ、あなたも試してみる?」道乃漫はすぐさま彼を噛み返した。

神崎卓礼は少しも痛くなかった。彼女のちょっとした力加減は、彼を傷つけないように気を遣っているようだった。

「痛いということは、夢じゃないってことだ」神崎卓礼は未練がましく彼女の唇にキスを続けた。

彼の抱擁はとても強く、とても熱かった。

胸も腕も、まるで石のように硬かった。

キスをする時はとても真剣で、その感触はとてもリアルだった。

さっき彼に噛まれた痛みも本物だった。

道乃漫にはわかっていた。これは夢ではないのに、なんだか落ち着かない気持ちだった。

おそらく前世があまりにも不運だったから、今世は少し運が良くて、それが不安なのかもしれない。

ついに、道乃漫は唇も舌もしびれるほどキスされて、やっと解放された。

神崎卓礼は車を病院の玄関前に停め、自分の今の状態を見下ろして、困ったように溜息をついた。「今の僕の状態じゃ、伯母さんに会うのは適切じゃなさそうだ」

道乃漫も一緒に見てしまい「……」

彼の反応があまりにも大きく、膨らんでいて、道乃漫は視線が熱くなり、急いで目を逸らした。

車内の温度が突然上昇した。

道乃漫は逃げるように車のドアを開けた。「じゃあ、先に行くね。バイバイ」

車を降りて、黒いウィンドウ越しに、まだ神崎卓礼の熱い視線が彼女を追いかけているのを感じることができた。

道乃漫は心臓が激しく鼓動し、病院に駆け込む時、足がもつれそうになった。

神崎卓礼は道乃漫の姿が見えなくなるまで待ってから、愛おしそうに微笑んだ。

そしてまた自分の今の状態を見下ろして、困ったように溜息をついた。

道乃漫に対して、どうしてこんなに我慢できないんだろう?

***

道乃漫が病室に戻ると、夏川清未はもう横になっていた。

ドアの開く音を聞いて、夏川清未は振り向いた。「漫、お帰り」

「お母さん、まだ寝てないの?」道乃漫は近寄って言った。「待たなくていいって言ったのに」