「今のは私のことを心配してくれていたんだね」神崎卓礼は磁性のある声に思わず笑みを帯びた。
道乃漫は恥ずかしくて彼の顔を見上げることもできず、急いで彼の喉仏から視線を逸らした。「お昼ご飯が冷めちゃうから、早く食べましょう」
「お昼ご飯より、実は君を食べたいんだけどね」神崎卓礼は気付けば片手を道乃漫の背後のソファに置き、彼女を閉じ込めていた。
道乃漫は隅の方に逃げるしかなかった。
しかし彼女が逃げれば、彼は追う。
一歩一歩と迫っていく。まるで彼女への追求関係と同じように、彼は常に彼女を追い詰め、逃げ場を与えなかった。
彼女が恥ずかしそうに俯いて彼を見られない、頬を赤らめている様子を見て。
神崎卓礼は他のことは確信が持てなくても、道乃漫が自分のことを嫌っていないことだけは確信が持てた。