大澤依乃は思案を巡らせ、「それなら私を選ぶべきだったはず。なぜ道乃漫なの?」
「私の知る限り、あなたが自ら審査に参加したいと申し出た時点では、審査内容が森田林の復帰に関するプロモーション企画だとは知らなかったはずですよ」藤井天晴は、大澤依乃が審査内容を知った時の表情がどれほど印象的だったかを覚えていた。
彼女はその時、自ら審査に参加すると申し出たことを後悔していただろう。
「誰が...誰がそんなこと言ったの!」大澤依乃は藤井天晴の言葉の意味を察し、「私が誰だか分かってるの?神崎叔父が早くから審査のことを教えてくれたのよ。本来なら参加する必要なんてなかったけど、面白そうだったから参加してみただけ」
「そうであれば、あなたが提出した企画案の内容を説明してください」藤井天晴は無表情で言った。
「それは...それは...」大澤依乃は言葉を詰まらせ、必死に考えても何も思い出せなかった。
昨日、混乱に乗じてパソコンから書類を印刷した時、ざっと目を通しただけで、まったく覚えていなかった。企画案を提出さえすれば万事解決すると思っていたのだ。
「私が説明します」道乃漫が前に出て、神崎卓礼の方を見た。
自分で書いた企画案は何度も修正を重ねて、すでに完璧に把握していた。
大澤依乃に企画案を盗ませたのも、この企画案がすでに神崎卓礼と森田林の目に触れていたからだ。
どうあっても大澤依乃を成功させるわけにはいかなかった。
道乃漫が筋道立てて、落ち着いて説明するのを聞いて、柳田姉や橘兄たちは感動の表情を浮かべた。
道乃漫が説明した企画案は本当に素晴らしく、独創的で予想外のものだった。
まだ具体的な実施はされていないが、彼らにも必ず成功すると分かった!
企画案が誰のものかなど、もう言うまでもない。
一方は言葉を詰まらせて何も説明できず、もう一方は筋道立てて明確に説明できる。
この時、神崎卓礼の目には自信に満ちた道乃漫の姿しか映っておらず、思わず口角が上がり、見れば見るほど好きになり、目には溶けきれないほどの愛情が溢れていた。
彼の大切な女の子は、なんてこんなに優秀なんだ!
問題に直面しても慌てることなく、冷静沈着で、出るべき時にはためらわない。
神崎卓礼の心には誇りが満ち溢れていた。
道乃漫は彼の視線に舌を噛みそうになり、耳まで真っ赤になった。