葉月星は慌てて駐車場に走り、辺りを見回して人がいないのを確認すると、素早く大澤依乃の車に乗り込んだ。
「なんで私を呼び出したの?電話で話せばいいじゃない。誰かに見られたら、私たちが何か企んでいると思われちゃうわ。私は——」
「あなたは実際に私と共謀しているのよ、他人が思うまでもないわ」大澤依乃は冷たく遮った。「葉月星、思い出させてあげましょうか。道乃漫のパソコンにウイルスを仕掛けたとき、そのウイルス入りのUSBを差し込んだのはあなたよ。私の携帯にはその動画が残っているわ」
「あなた——!」葉月星は大澤依乃がこれほど狡猾で、証拠まで撮っていたとは思わなかった。
大澤依乃は冷笑した。「どうしたの?私が必要な時は取り入って、今は私が退職したからって軽く見てるの?言っておくけど、私が神崎創映にいなくても、私の父は大澤書記よ!」
葉月星は慌てて笑顔を作った。「そんなことないわ。私は...私はあなたとは違うの。あなたは神崎創映を辞めても、いい仕事がたくさん待ってるし、独立して何かを始めることだってできる。でも私は普通の社員で、コネも人脈もない。夜遅くまで勉強して、やっと神崎創映に入れたのに、その努力を無駄にしたくないの」
話しているうちに、葉月星は目が赤くなってきた。
彼女は本当に神崎創映に入社した時の苦労を思い出していた。
道乃漫のように、何度もの筆記試験を受けることなく、面接だけで合格したわけではない。
道乃漫は大学も卒業していないし、専攻も違う。
だからこそ、彼女はこんなにも納得がいかず、憤りを感じていた。
大澤依乃には及ばないとしても、道乃漫にも及ばないというの?
なのに今、道乃漫は来たばかりなのに一つの案件を任され、今夜のチャリティーナイトにも参加する。
一方、彼女は仕事さえ失いそうになっている。
一体なぜ、事態がこんなことになってしまったのか?
「心配しなくていいわ。あなたが言うことを聞いてくれれば、私はあなたのことを暴露したりしないから」大澤依乃は苛立ちを見せた。
そんなに優しい心を持っているはずがない。
葉月星は非常に疑わしく思った。