169 道乃漫と武田立則が一緒に歩いてくるのを見て、神崎卓礼は目障りでしょうがなかった

しかし、幸いなことにこのドレスは控えめで、心の中でその価値を見積もっても、着ていても素人には分からないだろう。

オフィスに戻って荷物を片付けていると、ちょうど武田立则も準備を終え、道乃漫を呼びに出てきた。

しかし、道乃漫の姿を一目見て、彼は呆然となった。

心臓がドキドキと激しく鼓動し、耳先まで赤くなっていた。

このドレスは道乃漫の肌を透き通るように白く見せ、まるで仙女のようだった。

「道、道乃漫」と口を開くと、武田立则は自分が吃っているのに気づいた。

「武田部長」道乃漫は武田立则の様子の変化に気づかず、「準備できました。行きましょう」

武田立则は我に返り、まだ少しぼんやりしながら頷いた。「ああ、うん、行こう」

道乃漫と武田立则がオフィスを出ると、他の社員たちも片付けを始め、退社の準備をしていた。

柳田姉は優しく笑って言った。「彼女たちの言うとおり、武田部長は確かに道乃漫に好意を持っているわね。さっき道乃漫が新しい服装に着替えたのを見て、見とれていたもの」

「俺みたいな粗野な男でも分かるのに、道乃漫は鈍感で気づいていないんだな」と橘兄も笑いながら言った。

「そういう娘こそ、幸せになれるのよ」と柳田姉は笑顔で言った。

「バン！」

葉月星は不機嫌そうに書類を机に叩きつけた。誰もが彼女が武田立则のことを好きだということを知っていた。

彼女の前でこんな話をするなんて、どういうつもり！

柳田姉は冷ややかな目で見つめ、不快そうに首を振ったが、何も言わず、橘兄と高橋勉真を誘って一緒に帰った。

「お気に入りばかり持ち上げて！」葉月星は不満げに呟き、バッグを持って怒りながら出て行った。

***

道乃漫は武田立则について地下駐車場に向かい、興味深そうに尋ねた。「どの車で行くんですか？」

「さっき藤井助手から、社長と一緒に行くように言われました。そのほうが都合がいいそうです」武田立则は最初に聞いたとき、少し奇妙に感じた。例年、社長は彼らと一緒に行くことはなかったのだ。

しかし藤井助手は、どうせ同じ場所に行くのだから、一緒に行った方が便利だと言った。

武田立则はそれもそうだと思った。

それに、上からの決定なら、気に入らなくても仕方がない。

道乃漫は心の中でふふっと笑い、後でまだ何か仕掛けがありそうだと感じた。