しかし、武田立则は説得されてしまった。
主な理由は、頭を抱えて考えても神崎卓礼と道乃漫を個人的な感情面で結びつけることはできず、二人が恋人関係にあるとは到底思えなかったからだ。
この二人は、まるで正反対の存在のように見えたのだ!
そんな考えは武田立则の心に芽生えることすらなかったので、自然と藤井天晴の言葉を信じることになった。
結局のところ、森田林の支払い計画は道乃漫が単独で担当しており、自分には関係のないことだった。
社長が道乃漫と個別に相談するのは...別に問題ないよね?
それに森田林は会社の株主の甥だし、社長がそこまで気にかけるのも当然だ。
藤井天晴の説明は明らかに説得力に欠けていたが、それ以上何も言う必要もなく、武田立则は自分自身を納得させていた。
「武田部長、こちらの車に乗りましょう」藤井天晴は武田立则を三台離れた駐車スペースへと案内した。
武田立则が車に乗り込む時、ちょうど見えなかったのだが、神崎卓礼は自ら道乃漫のためにドアを開け、彼女を守るように座らせてから、自身も反対側から乗り込み、道乃漫と一緒に後部座席に座った。
「君は本当に綺麗だ」神崎卓礼は顔を向け、やっと近くで彼女を見ることができた。
今夜のパーティーに参加する名士たちのように、カメラ映りを気にして濃いメイクをしているわけではない。
道乃漫のメイクは薄く、出発前に少し化粧直しをして、より清潔感のある仕上がりにしただけだった。
「仕事でなければ、君を他人に見せたくもない」あまりにも綺麗で、人々の羨望の的になってしまう。
神崎卓礼は彼女の手を取り、手のひらで弄んでいた。
道乃漫は少し手を振り払おうとしたが、振り払えず、思わず前の運転手を見た。
神崎卓礼は軽く笑って、「高橋は大丈夫だよ」と言った。
以前、高橋が道乃漫のお弁当を取り換えに行ったことがあったのだ。
道乃漫は心の中で、それでも控えめにして欲しい、あまり露骨な愛情表現は良くないと思った。
しかし神崎卓礼は道乃漫を見れば見るほど好きになり、手を離すことができなかった。
彼女のロングドレス姿は、柔らかく可愛らしく、艶やかだった。
Vネックが彼女の脂のように白い肌を引き立て、神崎卓礼は思わず長い腕を伸ばし、彼女の腰を抱き寄せた。