神崎創映から解雇されたら、たとえ大澤書記の娘であっても、どこに行っても、この履歴書は良く見えないだろう。
大澤依乃は最上階まで駆け上がり、神崎卓礼のオフィスに入ろうとドアを押した。
今回は秘書室のスタッフが前回の教訓を活かし、誰も大澤依乃を入れようとせず、すぐに彼女を止めた。「大澤さん、社長は会議中です。」
「どけ!」大澤依乃は止めようとした矢崎芳彤を押しのけた。
怒りのせいなのか、大澤依乃の力は異常に強くなっていた。
彼女は「バン!」という音を立てて神崎卓礼のオフィスのドアを開け、神崎卓礼がソファに座り、向かい側には芸能人部、制作部、財務部のマネージャーが座っているのを目にした。
突然の物音に、全員が振り向くと、大澤依乃が突進してきた。「神崎兄、本当に私を辞めさせるの?」
「藤井天晴は何をしているんだ!」神崎卓礼は不機嫌そうに顔を曇らせた。
大澤依乃は心の中で喜んだ。やはり予想通り、これは神崎卓礼の意思ではなかったのだ。
彼女にはわかっていた。神崎兄は絶対に彼女を辞めさせないはずだと。
先ほどのは、ただの建前に過ぎなかったのだ。
藤井天晴がちょうど到着し、神崎卓礼の言葉を聞いて、急いで弁明した。「社長、大澤依乃には全て説明し、早く退職届を出して荷物をまとめて出て行くように言いました。大澤依乃が自分で承知せず、どうしても来たがったんです。」
「神崎兄、全て藤井天晴の私情です。私にはわかっています。あなたは絶対に私を辞めさせないはず。藤井天晴が道乃漫の仕返しのために、上を欺いて私を陥れようとしているんです!」大澤依乃は神崎卓礼を後ろ盾にできるという態度で言った。
藤井天晴は顔を覆った。彼は大澤依乃の自信に満ちた様子に感心したが、彼を巻き込まないでくれないだろうか!
指の隙間から、神崎卓礼の鋭い視線が飛んでくるのが見えた。
藤井天晴はすぐに三度震え、心の中で大澤依乃のバカ野郎!と罵った。
社長が大澤依乃の言葉を気にしないことを願っていたが、望まないことほど現実になるものだ。
すぐに神崎卓礼の質問が聞こえた。「へぇ?どうして道乃漫の仕返しになるんだ?」