165 退職願は書けましたか?

袋を持ってオフィスに入り、席に戻ったばかりで、まだ座れないうちに、大澤依乃が駆け寄ってきた。「よくも私を騙したわね!」

道乃漫は紙袋を脇に置き、ゆっくりと彼女の方を向いた。「どうやって騙したの?」

「とぼけないで!」大澤依乃は道乃漫の鼻先を指差して、「昨日あなた、提出した企画書とパソコンの中のが違うって言ったでしょう!」

「違うわよ。提出したのは初版で、修正前のもの。パソコンの中のは改訂版。同じなわけないでしょう?」道乃漫は意味ありげに大澤依乃を見つめた。

柳田姉と橘兄はそれを聞いて、首を振って笑った。

この道乃漫って子は、本当に悪戯っ子だな。

でも、この悪戯っ子ぶりが憎めない。

大澤依乃は道乃漫に馬鹿にされたと感じ、「それは言い訳よ!」

大澤依乃は手を振り上げ、道乃漫を殴ろうとした。