164 道乃漫がつま先立ちで神崎卓礼の顎にキスをした

デュランが株主の甥でも駄目だ。

「会議室で話しましょうか?」道乃漫は神崎卓礼の仕事の邪魔をしたくなかった。

「ここで大丈夫だよ。特に何もすることないから」と神崎卓礼は言った。

森田林は「へへ」と笑って、「おや、神崎兄、兄嫁さんをいじめるとでも思ってるの?」

「そんなことないさ。彼女をいじめることなんてできないよ。彼女は凄いんだから」神崎卓礼の顔には得意げな表情が溢れていた。

森田林は口角を引きつらせた。誰が神崎卓礼がこんな恋する男になるとは思っただろうか。

「じゃあ、ここで話しましょう」森田林も場所にはこだわらなかった。

「企画案の件は一旦置いておきましょう。それは長期的な話ですから。まずは今夜のチャリティーナイトについて。記者の取材があるので、予め想定される質問を考えてみました。私が質問しますので、どう答えるのが適切か相談しましょう。失礼な質問があっても気にしないでください」と道乃漫は言った。