206 事態重大、即刻解雇

彼の表情が暗いのを見て、藤井天晴は手元の仕事を置いて尋ねた。「武田部長、どうしたんですか？何かあったんですか？」

「社長は今お忙しいですか？ちょっとご相談したいことがありまして」と武田立则が言った。

「社長は今、財務部長と打ち合わせ中です」藤井天晴は腕時計を見て言った。「もうすぐ終わると思います。急ぎでしたら、ここで待ちますか？急がないなら、社長の打ち合わせが終わり次第、お電話しますが」

武田立则は少し眉をひそめて考え、「急ぎではありません」と答えた。

「もし話せることでしたら、先に私に話してもらえませんか？後で社長の打ち合わせが終わったら、私から伝えておきます。そうすれば、わざわざ来ていただく必要もないですし」と藤井天晴は手元の書類を整理しながら武田立则に言った。

武田立则は考えた末、問題ないと判断し、「今朝の会社の噂、ご存知ですよね」と切り出した。

「道乃漫のことですか？」藤井天晴は即座に真剣な表情になった。

神崎卓礼も既に知っており、徹底的な調査を命じていた。

武田立则はここに来る前からこの件で忙しくしていた。

武田立则は頷いて、「噂を広めた発信源が分かりました」と言った。

「ちょっと待ってください」藤井天晴はすぐに神崎卓礼のオフィスのドアをノックしに行った。

武田立则は「……」

さっきまで社長は打ち合わせ中だと言っていたのに、今度は邪魔をするのを気にしないのか？

「入れ」中から神崎卓礼の声が聞こえた。

武田立则は藤井天晴の後に続いて入室し、確かに神崎卓礼が財務部長と打ち合わせをしているのを目にした。

「何かあったのか？」神崎卓礼が尋ねた。

打ち合わせ中だと分かっていて、普段は邪魔されるのを嫌う彼のところにこの時間に来るということは、きっと重要な用件に違いない。

そのため、神崎卓礼は怒る様子も見せなかった。

「今朝の道乃漫に関する噂について、武田部長が発信源を突き止めました」藤井天晴は武田立则を中に招き入れ、「武田部長、説明をお願いします」と言った。

財務部長は目を瞬かせ、藤井天晴を見て、それから神崎卓礼を見た。

会社内での噂の流布は良くないことだが、こんな些細なことで社長が直接関与するようになったのは珍しい。