彼女のメンツを保つために、賞を取れなかった時のことを考えて、うまく逃げ道を作ってあげようと思った。
正直なところ、武田立则は夏川夢璃が賞を取れるとは思っていなかった。
彼女のレベルは、みんなが知っているところだ。
今回彼女を推薦したのは、他に適任者がいなかっただけだ。
道乃漫を推薦したかったが、そうすればまた騒ぎになるのは確実だった。
道乃漫には来年もチャンスがあると考え、広報部が全社の笑い者になることを避けるため、夏川夢璃の名前を社長に提出したところ、社長も承認してしまった。
しかし彼から見れば、夏川夢璃は今年ただの引き立て役で、道乃漫なら本当に賞を取れる可能性があった。
親切心で助けようとしたのに、感謝されないなら、もう知らない。
武田立则は腕時計を見て言った。「退社時間だ。じゃあ、行こうか。」