道乃啓元は道乃琪のために設立した芸能事務所内にも広報部門がありましたが、その広報部はそれほど優秀ではなく、一般的な案件は対応できるものの、道乃琪のイメージ回復のような仕事は解決できませんでした。
今回の授賞式には、彼らの会社も候補者を推薦しており、道乃啓元は広報部のスタッフと共に授賞式に参加していました。
彼は道乃漫を見かけると、すぐに表情が曇りました。
「道乃社長」と呼ばれ、道乃啓元は表情を取り繕い、笑顔で迎えました。
相手は笑みを浮かべながら尋ねました。「道乃社長、あちらにいるのはお嬢様の道乃漫さんですか?」
道乃啓元は一瞬躊躇してから、暗い声で「ああ」と答えました。「そうだ」
相手は笑いながら、「道乃漫さんは素晴らしいですね。まさか彼女もこの授賞式に参加するとは。ノミネートされているのでしょうか?」
道乃啓元は軽蔑的に冷笑しました。「彼女がノミネートされるわけがない。ただの物見遊山だよ。私が彼女を知らないわけがない。本当の実力なんて何もない。賞なんて取れるはずがない。恥をかかせないだけでもましなものだ」
相手は驚いて固まりました。まさか道乃啓元がそんなことを言うとは思いもしませんでした。
実の父親がこんな風に娘のことを言うものでしょうか?
まるで娘が彼の面目を潰しているかのようでした。
相手は空笑いを二つ三つ浮かべ、「道乃社長、謙遜されすぎです。道乃漫さんは最近、森田林さんの復帰を手助けし、素晴らしい仕事をされましたよ。各社が道乃漫さんの広報手法を模範事例として、社員に学ばせているとも聞きました。日本メディア芸術大学の広報専攻の授業でも、教授が特別に一コマを使って取り上げたそうです。私としては、今年道乃漫さんがノミネートされているなら、今夜の新人賞を獲得する可能性は十分にあると思います。ただ、神崎創映の広報部は優秀な人材が多く、競争が激しすぎるので、今年彼女を推薦したかどうかわかりません。でも私が思うに、今回の道乃漫さんの活躍は神崎創映でも極めて優秀な成果です。もし神崎創映が彼女を推薦しないのなら、私がこの機会に引き抜きを図りたいところです。どんな資源を使ってでも彼女を育成したいですね!」
道乃啓元の表情はさらに険しくなり、まるで道乃漫の優秀さが彼の面目を更に潰しているかのようでした。