上がってみると、夏川夢璃と神崎卓礼の隣以外に空席がないことに気づいた。
神崎卓礼はようやくスマートフォンから目を上げ、立ち尽くす道乃漫を見て、わざとらしく尋ねた。「どうして座らないの?」
道乃漫は藤井天晴の方を見やったが、藤井天晴は慌ててスマートフォンを取り出し、忙しそうなふりをした。
ふん!
道乃漫が覚悟を決めて夏川夢璃の隣に座ろうとした時、神崎卓礼が言った。「席がないの?じゃあ、ここに座って。」
彼は自分の隣の席を指さした。
夏川夢璃は腹が立った。最後に乗ればよかったのに、結局道乃漫に得をさせてしまった!
さっきの自分の言動が同僚に軽蔑されたのに、全く割に合わない!
道乃漫は大人しく神崎卓礼の隣に座った。
後ろに座っていた武田立则は、心の中で奇妙な感覚が強まり、思わず二人のシルエットを見つめた。なぜか不思議と似合っているように見えた。きっと目の錯覚だろう。