和泉子霖は電話を切って歩いてきた。「卓礼」
神崎卓礼は携帯をしまい、眉を上げた。「随分と早い行動だな」
和泉子霖は低く笑った。「そうさ、義妹に会いに急いで来たからね」
彼の声は特に美しく、宝石がぶつかり合うような、低く笑う時は磁性を帯びているかのようだった。
道乃漫はその声がとても聞き覚えがあると感じた。以前聞いたことがあるからというだけでなく、きっと他のどこかで聞いたことがあるはずだ。
神崎卓礼は道乃漫の方を向いて紹介した。「こいつがグループの和泉子霖で、霖意広報会社の社長でもある」
「知ってます、お噂はかねがね」道乃漫は和泉子霖に微笑んだ。
「それは表の顔で、もう一つ知らないかもしれない身分がある」神崎卓礼は続けた。「二次元では天宮鈴音という芸名で、有名な声優で、いくつかの映画で声を当てている」