以前は同僚の前で明かさなかった。一つは必要がないと思ったからで、もう一つは面倒なことが起きると思ったからだ。
しかし高木武一たちは会社で働いていないので、知っているか否かは影響がない。
最も重要なのは、彼女が神崎卓礼の決定を信頼していることだった。
高木武一たちは、神崎卓礼が親密に道乃漫の手を引いて座らせる様子を驚きの目で見つめた。一挙手一投足に愛情と気遣いが溢れており、少しも隠すことはなかった。
その自然な表現は、普段からの習慣が骨の髄まで染み付いているからこそだった。
高木武一はようやく理解した。なぜ神崎卓礼の反応があれほど早かったのか。彼が道乃漫を見つけたばかりで、詳しく話す暇もないうちに、藤井天晴が急いでやって来た理由を。
どんな大物芸能人でもその場で面接を受けるのに、藤井天晴は彼らを社長室に案内し、個別に話をして、他人が見物する機会を与えなかった。
「道乃漫は私の彼女だ」と神崎卓礼は自ら説明した。一時の気まぐれで場を取り繕うような付き合いではない。
高木武一たちは確かにそのような推測を心に抱いていた。神崎卓礼がこれほど真剣に紹介するのを聞いて、道乃漫を見る目がより一層真剣になった。
「なるほど、わざわざ私たちを呼んだわけだ」と高木武一は冗談めかして笑った。「彼女を守るためだったんですね」
「彼女は今、我が社の広報部で働いていて、先日ゴールデンフィンガー新人賞を受賞したばかりだ」と神崎卓礼は誇らしげに言い、謙虚という言葉の意味すら知らないかのようだった。
監督とはいえ芸能界にいる身として、広報業界と芸能界は切っても切れない関係にあり、高木武一はこの業界の専門賞についてよく知っていた。
「すごいですね!おめでとうございます」と高木武一は笑った。「道乃漫さんがこんなに若くて優秀だとは思いませんでした」
神崎卓礼はまさにこの褒め言葉を待っていたかのように、「漫はそういう子なんだ。何をしても、どの業界でも、必ず最も優秀な一人になる」
高木武一たち:「……」
神崎卓礼が極限まで褒めたので、彼らにはもう褒めようがなかった。
高木武一はただぎこちなく頷くしかなかった。「はい、はい」
道乃漫:「……」
彼女も神崎卓礼がここまで控えめでなく褒めるとは思わなかった。