以前は同僚の前で明かさなかった。一つは必要がないと思ったからで、もう一つは面倒なことが起きると思ったからだ。
しかし高木武一たちは会社で働いていないので、知っているか否かは影響がない。
最も重要なのは、彼女が神崎卓礼の決定を信頼していることだった。
高木武一たちは、神崎卓礼が親密に道乃漫の手を引いて座らせる様子を驚きの目で見つめた。一挙手一投足に愛情と気遣いが溢れており、少しも隠すことはなかった。
その自然な表現は、普段からの習慣が骨の髄まで染み付いているからこそだった。
高木武一はようやく理解した。なぜ神崎卓礼の反応があれほど早かったのか。彼が道乃漫を見つけたばかりで、詳しく話す暇もないうちに、藤井天晴が急いでやって来た理由を。
どんな大物芸能人でもその場で面接を受けるのに、藤井天晴は彼らを社長室に案内し、個別に話をして、他人が見物する機会を与えなかった。