243 公衆の前で手を繋ぐ

知名度はどうでもいい、大切なのは彼の要求に合うことだ。

結果として多くを見たが、要求に合うものは一つもなかった。

彼が諦めかけ、動きを変えようと決めた時、道乃漫を見つけた！

これは高木武一を大いに喜ばせた！

残るは、道乃漫の演技の才能を見ることだけだ。

幸い女三号はアクションシーンが多く、元の俳優も演劇学校出身ではなかった。

あまりにひどくなければ、何とかなる。

演じながら、教えることもできる。

「高木監督」藤井天晴が急いでやってきた。

「藤井助手？」高木武一は藤井天晴に丁寧に応じた。「神崎社長から何か指示でも？」

「道乃漫でよろしいですか？」藤井天晴は尋ねた。

「今のところはね。演技の面での様子も見てみないと」高木武一は言ったが、すでに道乃漫に傾いていた。

「ここは人が多すぎて不便です。皆様、私についてきてください。個別に話しましょう」藤井天晴は「どうぞ」と手振りをして、高木武一たちを先に行かせた。

道乃漫も一緒についていった。

藤井天晴を見て、柳田姉は道乃漫に何も問題がないことを悟り、すぐに渡邉梨子を呼び、夏川夢璃を引っ張って立ち去った。

「まだスター気取りなの？さっき監督がここにいたのに、あなたなんて見向きもしなかったでしょう。何を考えているの！」柳田姉は夏川夢璃を引っ張りながら言った。「早くオフィスに戻りなさい。今日のこの騒ぎは、武田部長もきっと聞いているわ。私たちが無断で持ち場を離れたのは間違いだけど、今日は暇だから見学に来ただけなら、武田部長も大目に見てくれるでしょう。でもあなたは無断で持ち場を離れただけでなく、こんな醜態を晒して、本気で追及されたら大変なことになるわよ！」

しかも夏川夢璃だけでなく、来た人全員が追及されることになる！

柳田姉は今や夏川夢璃にうんざりしていた。なんてトラブルメーカーなんだ！

それに、夏川夢璃は広報部の同僚だけでなく、他部署の同僚まで巻き込んでしまった。

今回は多くの人が来ていて、これから皆叱責を受けることになる。

そのため、四方八方からの怨嗟の視線が、柳田姉たち三人を飲み込もうとしていた。

夏川夢璃は顔色を悪くした。なぜみんないつも最初に道乃漫に注目するの！

いつもそう！

道乃漫がいるといつも、いいことは全部道乃漫のもので、何をしても道乃漫に台無しにされる！