道乃漫は彼にキスされ、さらに艶やかに潤んだ唇を彼の喉仏の前に止め、神崎卓礼が指し示した場所には行かず、突き出た喉仏に少し力を込めた。
道乃漫が離れると、彼の喉仏に赤い痕が残っているのが見えた。
道乃漫は満足げに微笑んで、「できあがり」と言った。
神崎卓礼は鏡を見なくても何が起きたか分かっていた。
さっきこの娘にされたことで、やっと収まった反応がまた湧き上がってきた。
こんなことになるなら、自分で火をつけるんじゃなかった。
彼は仕方なく道乃漫のお尻を軽く叩いて、「いたずらっ子!」と言った。
彼女の目に浮かんだ狡猾な表情を思い出すと、この小娘は明らかにわざとやったのだ!
この位置だと、シャツの襟では全然隠せない。
道乃漫は企みが成功したような表情で笑いながら、彼のシャツの襟のボタンを付け直し、ネクタイも整えてあげた。
案の定、彼女が残した赤い痕跡は全て外に見えていた。
神崎卓礼は仕方なく立ち上がって、鏡を見に行った。
この娘の付けた場所は芸術的で、ちょうど真ん中で、左右対称だった。
「本当に行くわ」道乃漫はドアの端に寄りかかり、危険な縁で探るような狡猾な様子は、いつでも逃げ出せる準備ができている子猫のようだった。
神崎卓礼は彼女のその様子に呆れ笑いし、近寄って彼女の柔らかい頬を摘まんで、「君に何かするわけないだろう?」
道乃漫は彼を見つめ、その後視線を少し下に固定して、「大丈夫になった?」
「……」彼女の視線の下で、神崎卓礼はまた自分が大丈夫ではなくなってきたのを感じた、「送っていくよ」
神崎卓礼は道乃漫をオフィスの外まで送り、ドアの前に立って、「帰ったら何も心配しなくていい。休暇の件は私から直接武田立则に話しておく」
彼は武田立则に道乃漫と話す機会を与えたくなかった。
たとえ道乃漫が武田立则のことを好きではなくても、彼は武田立则にわずかな機会すら与えたくなかった。
***
道乃漫がオフィスに戻ると、夏川夢璃の不満と恨みの混ざった視線が道乃漫に注がれた。
さっき葉月香音から電話があり、道乃漫が高木武一に選ばれて元の女三号の役を引き継ぐ可能性が高いと聞いた。
葉月香音は道乃漫が社長と高木武一たちと一緒に座って話をしているのを目撃したが、役を引き継ぐ話以外にありえなかった。