今はもっと胸が痛くなるほど腹が立っていた。
夏川清翔がよくもあつかましく訪ねてきて、道乃漫に役を道乃琪に譲れと言うなんて!
「監督やプロデューサーをどう考えているの?」道乃漫は冷たい声で言った。「私は制作側と契約を結んでいて、違約金は1000万よ。私に役を道乃琪に譲れって言うなら、その違約金、あなたが払うの?」
「い...1000万?」夏川清翔は呆然として、舌がもつれた。「な...なんでこんなに高いの...」
1000万なら道乃家は出せるけど、もったいないわ!
なぜ道乃漫の違約のために、道乃家がお金を払わなければならないの?
「お姉さん、新人だから、ギャラは安いでしょう?」道乃琪もケチな考えで、夏川清翔と同じように、得したいけど出し惜しみする態度だった。
彼女が16歳でデビューした時も新人で、全くチャンスがなく、道乃啓元がお金を使って宣伝してくれたけど、最初の3年間は赤字だった。